浅葱色の計算用紙

数学(広義)を扱っています。

夕日が背中を押してくる

問題:

夕日(周波数\( f \)の光)が静止している質量\(m\)の物体に水平から一度に投射される。光は全て反射するものとし、夕日のエネルギーは\(E\)Jであるとする。このとき、物体はどれだけの速度を得るか?高速度は\(c\)、プランク定数は\(h\)とする。

 

解答:

まず、1個の光子が物体にどれだけの運動エネルギーを与えるかを考える。

周波数\( f \)の光が持つエネルギーは\(hf\)、運動量は\(\frac{hf}{c}\)であるから、衝突後の光の周波数を\(f'\)、物体の速度を\(v\)とすると、衝突前と衝突後のエネルギー保存則と運動量保存則を考えて、

\( hf = hf' + \frac{1}{2}mv^2 \)

\( \frac{hf}{c} = -\frac{hf'}{c} + mv \) 

これらを整理すると、

\( hf - hf' = \frac{1}{2}mv^2 \)

\( hf + hf' = mv c \)

であるから、\( f'=\frac {mv(2c-v)}{4h} \)となる。

これを第2式に代入すると、

\( hf + \frac {mv(2c-v)}{4} =mv c \)であるから、

これを\(v\)について解くと、

\(v = \frac{\sqrt{(mc)^2+4mhf}-mc}{m} \)

なお、このとき

\( f' = \frac{mv c}{h}-f =\frac{c}{h}(\sqrt{(mc)^2+4mhf}-mc)-f \)

となる。

これは1個の電子が与えるエネルギーであり、\(E\)Jのエネルギーは電子\(\frac{E}{hf}\)個分に相当する。また、速度は運動エネルギーの平方根に比例するので、求める速度は

\( \frac{\sqrt{(mc)^2+4mhf}-mc}{m}\sqrt{\frac{E}{hf}} \)

となる。

 

 

注釈:

実際に夕日が人の背中を押した場合を考える。数値としては、\(E=70\mathrm{[J]}\) (夕日1秒分), \(m=42\mathrm{[kg]}\), \(f= 4.0 \times 10^{14} \mathrm{[Hz]} \) (赤い光)とする。すなわち、1秒間だけ押した場合を考える。このときの速度は

\( 6.837\times10^{-17} \mathrm{[m/s]} \)

となる。

中和滴定を微分してみた

今週のお題「わたしのインターネット歴」

この記事は日曜数学アドベントカレンダー13日目の記事です。

昨日の記事は、unaoyaさんによる

unaoya-pi.hatenablog.comでした。

 

注意:この記事の主題は化学です。12月13日にちなんだ素数大富豪の記事を期待した人はブラウザバックしてください。

注意:この記事は、前提知識として高校化学(基礎ではない)を必要とします。

エラー:この記事の本体は高校レベルの関数の微分であり、他の記事に比べてクオリティが低いです。すみません。 

 

私は滴定曲線に対して、ある疑問を抱いていた。というわけで、次の図を見てほしい:

f:id:itonayuta60:20171202072237j:plainf:id:itonayuta60:20171202072245j:plain

(各図はWikipedia「中和滴定曲線」のものを使用した。左図は0.1mol/L塩酸10mLを0.1mol/L水酸化ナトリウムで中和、右図は0.1mol/L酢酸10mLを0.1mol/L水酸化ナトリウムで中和したときの滴定曲線だと記されている。)

 

(1)左図において、10.00(V/ml)の点でグラフの接線がpH軸に平行になっているように見えるが、それは本当なのか?

(2)右図において、0.00~5.00(V/ml)の部分の曲線が上に凸になっているように見えるが、その部分では微分係数はどうなっているのか?

本記事では、これらの問題を解くことにする。

 

以下、簡単のため1mol/L塩酸(または酢酸)1Lを1mol/L水酸化ナトリウムで中和するものとする。

 水のイオン積は10^-14(定数)、塩酸と水酸化ナトリウムの電離度は1(定数)とする。

横軸には加えた水酸化ナトリウムの量(単位はL)、縦軸には水溶液のpHをとることにする。

(1)強酸と強塩基の滴定

\([\mathrm{H}^+]\)を求める

\( x \)LのNaOHが加えられたとする。このとき、水溶液は合計で\( 1+x \)L存在する。

 このとき、水溶液中には元々H+が1molあったところにOH-が\( x \)mol加えられた。

また、H+とOH-は適宜中和して\([\mathrm{H}^+][\mathrm{OH}^-]=10^{-14}\)になるように調整されるので、中和したH+とOH-の量を\( t \) molとすると、H+は\(1-t\)mol,OH-は\(x-t\)mol残っているので、

\( \frac{1-t}{1+x} \frac{x-t}{1+x} =10^{-14} \)  が成り立つ。

これを解くと、

\( (1-t)(x-t) =10^{-14}(1+x)^2 \)

\( t^2-(1+x)t+x-10^{-14}(1+x)^2=0 \)

\( t=\frac{(1+x)\pm\sqrt{(1+x)^2-4x+4\cdot10^{-14}(1+x)^2}}{2} \)

よって、\( [\mathrm{H}^+] = \frac {1-t}{1+x} \) であるから、

 \( \begin{eqnarray} [\mathrm{H}^+] &=&\frac{1-x\mp\sqrt{(1+x)^2-4x+4\cdot10^{-14}(1+x)^2}}{2(1+x)} \\ &=&\frac{1-x\mp\sqrt{(1-x)^2+4\cdot10^{-14}(1+x)^2}}{2(1+x)} \end{eqnarray} \)

 \( [\mathrm{H}^+]>0 \)より、\( [\mathrm{H}^+]=\frac{1-x+\sqrt{(1-x)^2+4\cdot10^{-14}(1+x)^2}}{2(1+x)} \) となる。

 検算

\( x \rightarrow 0 \) と \( x \rightarrow \infty \)での極限を求める。

\( x \rightarrow 0 \) のときはそのまま\( x=0 \) を代入することができ、

\( [\mathrm{H}^+]=\frac{1+\sqrt{1+4\cdot10^{-14}1}}{2} \simeq 1 \)

となる。(水の電離があるため正確に1にはならない)

一方、\( x \rightarrow \infty \) のときもそのまま極限を取ることができ、

\( \begin{eqnarray} [\mathrm{H}^+]&=&\frac{\frac{1-x}{1+x}+\sqrt{(\frac{1-x}{1+x})^2+4\cdot10^{-14}}}{2}  \\ &=& \frac{-1+\sqrt{1+4\cdot10^{-14}}}{2} \simeq 10^{-14} \end{eqnarray} \)

となる。(2行目の\(\simeq\)では\(\sqrt{1+\epsilon}\simeq1+\frac{\epsilon}{2}\)という近似を使った)

 (水の電離があるため正確に10^-14にはならない)

pHの微分

 NaOHを\(x \)L加えた時のpHを\( y \)とすると、

\( \displaystyle{ \begin{eqnarray} y&=&-\log_{10}{\frac{1-x+\sqrt{(1-x)^2+4\cdot10^{-14}(1+x)^2}}{2(1+x)}} \\ &=& \log_{10}{2} + \log_{10}{(1+x)} - \log_{10}{\left(1-x+\sqrt{(1-x)^2+4\cdot10^{-14}(1+x)^2} \right) }  \end{eqnarray} } \)

 であるから、この式を\(x\)について微分する。

\( \begin{eqnarray} \frac{dy}{dx} &=& \frac{1}{\log{10}}\left( \frac{1}{1+x}-\frac{-1+\frac{-2(1-x)+4\cdot10^{-14}\cdot2(1+x)}{2\sqrt{(1-x)^2+4\cdot10^{-14}(1+x)^2}}}{1-x+\sqrt{(1-x)^2+4\cdot10^{-14}(1+x)^2}} \right) \end{eqnarray}\)

これに\(x=1\)をそのまま代入すると、

\( \begin{eqnarray} \frac{dy}{dx}&=&\frac{1}{\log{10}}\left( \frac{1}{2}-\frac{-1+\frac{16\cdot10^{-14}}{2\sqrt{16\cdot10^{-14}}}}{\sqrt{16\cdot10^{-14}}} \right) \\ &=&\frac{1}{\log{10}}\left( \frac{1}{2}-\frac{-{2\sqrt{16\cdot10^{-14}}}+16\cdot10^{-14}}{32\cdot10^{-14}} \right) \\ &=& \frac{1}{\log{10}}\left( \frac{1}{2}+\frac{{8\cdot10^{-7}}-16\cdot10^{-14}}{32\cdot10^{-14}} \right) \\ & \simeq & \frac{1}{\log{10}} \left( \frac{1}{2}+\frac{1}{4}\cdot10^{7} \right) \\&\simeq&1.085\cdot10^{6}\end{eqnarray} \)

となる。

 このことから、滴定曲線の中和点での微分係数が無限大ではないことがわかった。

実際にグラフ描画ソフトでも確かめてみることにする。左図は滴定曲線、右図は\(x=1\)付近での拡大図である。(描画にはGRAPES Ver7.35を用いた)

 

f:id:itonayuta60:20171207062803p:plain             f:id:itonayuta60:20171207062925p:plain

右図によると、1の付近では\(x\)が\( 0.0000001(=10^{-7}) \)増えると\(y\)は約\(0.11\)増えていることがわかる。すなわち、\(x=1\)での接線の傾きは\(\frac{0.11}{10^{-7}}=1.1\cdot10^6\)であり、これは上で求めた値と有効数字2桁で一致する。

 

(2)弱酸と強塩基の滴定

酢酸は次のように電離する:

\( \mathrm{CH_3COOH} \rightleftharpoons \mathrm{CH_3COO}^- + \mathrm{H}^+ \)

また、この電離の平衡定数は反応中は一定であるものとし、これを\(K\)で表す:

\( K = \frac{[\mathrm{CH_3COO}^-][\mathrm{H}^+]}{[\mathrm{CH_3COOH}]} \)  (=定数)

このとき、水酸化ナトリウムが\(x\)L加えられ、加えられたOH-のうちの\(t\)molが中和したとすると、\([\mathrm{H}^+], [\mathrm{OH}^-], [\mathrm{Na}^+], [\mathrm{CH_3COO}^-],[\mathrm{CH_3COOH}]\)の間には、次のような関係がある。

水のイオン積より

\( [\mathrm{H}^+][\mathrm{OH}^-]=10^{-14} \cdots(2.1) \)

水酸化ナトリウムを加えられた量は\(x\)molなので

\( [\mathrm{Na}^+]=\frac{x}{1+x} \cdots(2.2) \)

酢酸の電離平衡より

\( \frac{[\mathrm{CH_3COO}^-][\mathrm{H}^+]}{[\mathrm{CH_3COOH}]} = K \cdots(2.3) \)

酢酸は最初に\(1\)molあったので

\( [\mathrm{CH_3COO}^-]+[\mathrm{CH_3COOH}]=\frac{1}{1+x} \cdots(2.4) \)

水素イオンのうち\(t\)molは中和したので

\( [\mathrm{H}^+]+[\mathrm{CH_3COOH}]=\frac{1-t}{1+x} \cdots(2.5) \)

水酸化物イオンのうち\(t\)molは中和したので

\( [\mathrm{OH}^-]=\frac{x-t}{1+x} \cdots(2.6) \)

未知数が(各濃度と\(t\)で)6個、式が6本あるので解けるはずである。

これを\( [\mathrm{H}^+] \)について解く。

まず、(\(t\)を消去するために)(2.2)-(2.4)+(2.5)-(2.6)を整理すると、

\( [\mathrm{Na}^+]+[\mathrm{H}^+]=[\mathrm{OH}^-]+[\mathrm{CH_3COO}^-] \)

となる。これは電気量保存則を表す。

 また、(\( [\mathrm{Na}^+] \)を消去するために)この式に(2.2)を代入すると、

\( \frac{x}{1+x}+[\mathrm{H}^+]=[\mathrm{OH}^-]+[\mathrm{CH_3COO}^-]  \cdots(2.7)\)

となる。

 さらに、(\( [\mathrm{CH_3COOH}]\)を消去するために) (2.4)を変形して

\( [\mathrm{CH_3COOH}]=\frac{1}{1+x}-[\mathrm{CH_3COO}^-] \)

とし、これを(2.3)に代入すると

\( \frac{[\mathrm{CH_3COO}^-][\mathrm{H}^+]}{\frac{1}{1+x}-[\mathrm{CH_3COO}^-]} = K \cdots(2.8) \)

となる。

 さらに、(\( [\mathrm{OH}^-] \)を消去するために) (2.1)を変形して

\( [\mathrm{OH}^-]=\frac{10^{-14}}{[\mathrm{H}^+]} \)

とし、これを(2.7)に代入し、その両辺に\({[\mathrm{H}^+]}\)をかけると

\( \frac{x}{1+x}[\mathrm{H}^+]+[\mathrm{H}^+]^2=10^{-14}+[\mathrm{CH_3COO}^-][\mathrm{H}^+]  \cdots(2.9)\)

となる。

さらに、(2.8)を\([\mathrm{CH_3COO}^-]\)について解くと、

 \( [\mathrm{CH_3COO}^-]=\frac{K}{(1+x)([\mathrm{H}^+]+K)} \)

であるから、これを(2.9)に代入して、

\( \frac{x}{1+x}[\mathrm{H}^+]+[\mathrm{H}^+]^2=10^{-14}+\frac{K}{(1+x)([\mathrm{H}^+]+K)}[\mathrm{H}^+] \)

となり、これを変形すると

\( [\mathrm{H}^+]^3+\left( K+\frac{x}{1+x} \right)[\mathrm{H}^+]^2+\left(\frac{x-1}{x+1}K-10^{-14}\right)[\mathrm{H}^+]-10^{-14}K=0 \cdots(2.10)\)

となる。

しかし、この3次方程式は簡単な因数分解ができない形なので、このまま(2.10)の両辺を\(x\)で微分する。

\( 3[\mathrm{H}^+]^2 \frac{d[\mathrm{H}^+]}{dx}+\frac{1}{(1+x)^2} [\mathrm{H}^+]^2+2\left( K+\frac{x}{1+x} \right)[\mathrm{H}^+] \frac{d[\mathrm{H}^+]}{dx}+\frac{2K}{(1+x)^2}[\mathrm{H}^+]+\left(\frac{x-1}{x+1}K-10^{-14}\right)\frac{d[\mathrm{H}^+]}{dx}=0 \)

\( 3[\mathrm{H}^+]^2 \frac{d[\mathrm{H}^+]}{dx}+\frac{1}{(1+x)^2} [\mathrm{H}^+]^2+2\left( K+\frac{x}{1+x} \right)[\mathrm{H}^+] \frac{d[\mathrm{H}^+]}{dx}+\frac{2K}{(1+x)^2}[\mathrm{H}^+]+\left(\frac{x-1}{x+1}K-10^{-14}\right)\frac{d[\mathrm{H}^+]}{dx}=0 \)

\( \left(3[\mathrm{H}^+]^2+2\left( K+\frac{x}{1+x} \right)[\mathrm{H}^+] +\left(\frac{x-1}{x+1}K-10^{-14}\right)\right) \frac{d[\mathrm{H}^+]}{dx}+\frac{[\mathrm{H}^+]^2+2K[\mathrm{H}^+]}{(1+x)^2}=0 \)

\( \frac{d[\mathrm{H}^+]}{dx}= - \frac {[\mathrm{H}^+]^2+2K[\mathrm{H}^+]} { (1+x)^2\left(3[\mathrm{H}^+]^2+2\left( K+\frac{x}{1+x} \right)[\mathrm{H}^+] +\left(\frac{x-1}{x+1}K-10^{-14}\right)\right) } \)

ここで、(1)と同様に\(y=-\log_{10}[\mathrm{H}^+]\)とすると、求めたいのは\( \frac{dy}{dx} \)であるから、

\( \frac{dy}{dx} = \frac{dy}{d[\mathrm{H}^+]}  \cdot \frac{d[\mathrm{H}^+]}{dx} \) より、

\(\frac{dy}{d[\mathrm{H}^+]}=-\frac{1}{\log{10} [\mathrm{H}^+]}\)から

\( \frac{dy}{dx}= \frac {[\mathrm{H}^+]+2K} { \log{10} (1+x)^2\left(3[\mathrm{H}^+]^2+2\left( K+\frac{x}{1+x} \right)[\mathrm{H}^+] +\left(\frac{x-1}{x+1}K-10^{-14}\right)\right) } \) がわかる。

ここで、\(x=1\)のときの\([\mathrm{H}^+]\)を求める。(2.10)に\(x=1\)を代入すると、

\( [\mathrm{H}^+]^3+\left( K+\frac{1}{2} \right)[\mathrm{H}^+]^2-10^{-14}[\mathrm{H}^+]-10^{-14}K=0 \)

となるが、この方程式は簡単には解けずこれ以降の計算も困難でもあるため、ここからは実際の酢酸のデータである\(K=10^{-4.76}\)を代入してコンピューターで数値計算を行った。

すると、\(x=1\)のとき\( [\mathrm{H}^+]=5.89542\cdot10^{-10}\),

\( \frac{dy}{dx}= 6400.87 \)となった。

実際にグラフ描画ソフトでも確かめてみることにする。左図は滴定曲線、右図は\(x=1\)付近での拡大図である。(GRAPESでは正しく描画されなかったので描画にはオンライン版Desmosを用いた。右図において、縦軸は\(x=1\)のところにあり横軸は細い1目盛りが\(10^{-5}\)に相当する。)

f:id:itonayuta60:20171210073130p:plainf:id:itonayuta60:20171210073404p:plain

右図において、\(x\)が\(10^{-5}\)進む間に\(y\)は約0.06増加していることが分かるので、この図からも\(\frac{dy}{dx}\simeq 6 \cdot 10^3 \)であることがわかる。

 

 

・・・本来は(2.10)をもう一度微分して\(x=0\)での2階微分係数を調べる予定でしたが、1階導関数ですでにこれだけ複雑になっているのでこれ以上の計算は諦めました。

 

というわけで、さまざまな\(K\)の値とそのときの\(\frac{dy}{dx}\)の表およびそのグラフ(両軸対数目盛)を載せて終わりにします。

 

\(K\) \([\mathrm{H}^+]\) \(\mathrm{pH}\)    \(\frac{dy}{dx}\)
0(極限) 2.0000*10^-14 13.6990             0.2172
 
10^-14 2.7321*10^-14 13.5635             0.2966
10^-13 5.5826*10^-14 13.2532             0.6061
10^-12 1.5177*10^-13 12.8188             1.648
10^-11 4.5733*10^-13 12.3398             4.965
10^-10 1.4242*10^-12 11.8464           15.46
10^-9 4.4821*10^-12 11.3485           48.66
10^-8 1.4152*10^-11 10.8492         153.65
10^-7 4.4731*10^-11 10.3494         485.66
10^-6 1.4143*10^-10   9.8495       1535.57
10^-5 4.4722*10^-10   9.3495       4855.62
10^-4 1.4141*10^-9   8.8495     15353.20
10^-3 4.4677*10^-9   8.3499     48507.22
0.01=10^-2 1.4003*10^-8   7.8538   152033.58
0.1=10^-1 4.0825*10^-8   7.3891   443250.01
1=10^0 8.1650*10^-8   7.0880   886899.89
10=10^1 9.7590*10^-8   7.0106 1059570.04
100=10^2 9.97509*10^-8   7.001083 1083032.00
10^3 9.997501*10^-8   7.0001085 1085464.87
 
∞(極限) 10^-7   7 1085736.20

 

f:id:itonayuta60:20171212171810p:plain

 

綺麗なシグモイドですね。

 

 

 

明日の記事は、integers_blog(せきゅーん)さんによる「Ramanujanの論文を一つ紹介します」です。

異なる3個の実数解

※この記事は、このブログ記事に対する解答用紙となっています。

 

問題:

連続な実数値関数fであって、任意の実数kに対して、f(x)=kを満たすようなxがちょうど3個あるような関数は存在するか?

 

解答

存在する。次のようなグラフを考える:

f:id:itonayuta60:20170708183003p:plain

このグラフは、f(x)=sinx+ax(aは0<a<1をみたす定数)のグラフであり、かつx>0での最初の極小値がちょうど0になるようにaを設定した関数である。これが任意の実数kに対しf(x)=kを満たすxが3個あることは図より明らかである。

 

ちなみに、aの値を求めようとすると次のようになる。

 

\( f(x)=\sin{x}+ax \) について、

\( f'(x)=\cos{x}+a \)であるから、

x>0での最初の極小値をとるxの値は

\( x=2\pi-\cos^{-1}{-a} = \pi + \cos^{-1}{a} \)

であるから、その時の極小値は

\( \sin{(\pi+\cos^{-1}{a})}+ a\pi + \cos^{-1} {a} \)

=\( -\sqrt{1-a^2}+a\pi +a\cos^{-1}{a} \)

 

よってaは

\( a(\pi+\cos^{-1}{a})=\sqrt{1-a^2} \)

を満たすが、この方程式は解析的に解くことが出来ない。

(なお、aの値は小数では0.2172336282...となる)

強正優美問題をグレブナー基底で解く

(%i5) gb:poly_buchberger([s*t*b,k*t*(1-b),(1-s)*k*b,(1-s)*(1-k)*t,(1-k)*(1-t)*b,(1-s)*(1-t)*(1-b),s*(1-k)*(1-b),s*k*(1-t)],[s,t,b,k]);

 

(gb)[b*s*t,k*t-b*k*t,b*k-b*k*s,k*s*t-s*t-k*t+t,b*k*t-b*t-b*k+b,-b*s*t+s*t+b*t-t+b*s-s-b+1,b*k*s-k*s-b*s+s,k*s-k*s*t,-s*t-b*t+t-b*s+s+b-1,k*t-b*t-b*k+b,-k*s-b*s+s+b*k-1,1]

【物理?】電気力線の方程式を求める(1)【数学?】

定義

とは、物体に加速度を与えるベクトル量であり、力と加速度の関係は、力を\( \vec{F} \), 物体の質量を\( m \),加速度を\( \vec{a} \)とすると、\( \vec{F}=m\vec{a} \)となる。

仕事とは、物体に与えられたエネルギーを表すスカラー量であり、x=tの所でx軸方向の正の向きにf(t)の力を受けて物体がx=aからx=bまで動いた場合、その力が物体に与えた仕事は \( \int_{a}^{b}f(x)dx  \)となる。

電荷とは、スカラー量(負でもよい)を持つ点である。

電気量とは、電荷が持っているスカラー量であり、記号はqやQを使う。

静電気力とは、電荷同士が受ける力であり、その大きさはkを比例定数、rを電荷間の距離、q,Qを2つの電荷の電気量とすると\( \frac {kqQ} {r^2}  \)であり、qQ>0のとき斥力、qQ<0のとき引力となる。

電位とは、スカラー場であり、電位がVだけ高い所に電気量がQの電荷を移動させるにはQVの仕事を要する。通常、無限遠点での電位を0とする。

等電位面とは、電位が等しい点を結んでできる図形であり、それが曲線の時は等電位線ともいう。

電気力線とは、正の電気量が静電気力に従って動く軌跡である。最初の電荷の位置によって同じ電荷の配置であっても異なる電気力線が描かれる。

 

定理

固定された電荷が1個だけある空間において、その電荷の電気量をQとすると、電荷からの距離がrの点での電位は\(  {kQ} \over r  \)である。

固定された電荷が原点にあるとする。

原点からの距離がxの点で、電気量が+1の電荷は\( \frac {kQ} {r^2}  \)の力を受けるので、この電荷が「原点からの距離がrの点」から「無限遠」まで行くときに静電気力がした仕事は、

\( \int_{r}^{\infty} \frac {kQ} {x^2}  dx = \left[ -{kq}\over{x} \right]^{\infty}_{r} = \frac{kq}{r} \)

よって電位はkQ/r÷1=kQ/rとなる。

 

等電位面と電気力線は、必ず直交する。

そうでなければ、等電位面にそって電荷を動かしたとき、仕事が発生する。

放物線の共通接線

問題:「2次の係数の符号が異なる2つの放物線の共通接線は何本あるか?」

 

2次の係数が正であるほうの放物線をC1、2次の係数が負であるほうの放物線をC2とする。

放物線の内側から接線を引くことはできない、すなわち、放物線の接線は内側を通らない。

 

 

(i)放物線が交わるとき 

共通接線が存在すると仮定する。

 

(a)接点がPとQの間にあるとき

接点が片方の放物線の内側にあることになり、放物線の内側に接線がないことに矛盾

 

(b)C1側の接点がPより左にあり、C2側の接点がQより右にあるとき

PとQの間を通るx軸に垂直な直線L(図中の緑)を考えると、L上の全ての点はC1またはC2の内側にある。

接線は2つの接点を通る直線なので、 この接線は必ずLと交わるが、これは接線が放物線の内側を通らないことと矛盾

また、C1側の接点がQより右にあり、C2側の接点がPより左にあるときも同様に矛盾する。

 

(c)C1,C2側の接点がともにPより左にあるとき

平均値の定理より、線分PQと同じ傾きを持つC1の接線がPとQの間に存在する。

この傾きをmとすると、C1は下に凸なので傾きは単調増加、よって共通接線の傾きをxとするとx<m・・・①

同様に、線分PQと同じ傾きを持つC2の接線がPとQの間に存在し、C2は上に凸なので傾きは単調減少、よってx>m・・・②

①②は同時には成り立たないので矛盾

また、C1,C2側の接点がともにQより右にあるときも同様に矛盾する。

 

以上より、共通接線が存在すると仮定してどのような場合でも矛盾が生じたので、共通接線は存在しない。

 

 

(ii)放物線が接するとき

 「接する」の定義より、接点Pで1本共通接線(図中の赤)(これをNとする)が引ける。以下、これ以外に共通接線(これをMとする)が存在すると仮定して矛盾を導く。

(a)C1側の接点がPより左にあり、C2側の接点がPより右にあるとき

Pを通るx軸に垂直な直線L(図中の緑)を考えると、L上のPでない全ての点はC1またはC2の内側にある。

接線は2つの接点を通る直線であり、 この接線は必ずLと交わる。

MとLとの交点がPでないとすると、Mは放物線の内側を通ることになり矛盾

MとLとの交点がPであるとすると、MはC1とPで交わるが、放物線と接線の交点は接点のみなのでこのときMはPで接していることになりMはNとと一致し、接点がPより左側にあることに矛盾

また、C1側の接点がPより右にあり、C2側の接点がPより左にあるときも同様に矛盾する。

 

(b)C1,C2側の接点がともにPより左にあるとき

Nの傾きをmとし、Mの傾きをxとすると

C1は下に凸なので傾きは単調増加、よってx<m・・・①

C2は上に凸なので傾きは単調減少、よってx>m・・・②

①②は同時には成り立たないので矛盾

また、C1,C2側の接点がともにPより右にあるときも同様に矛盾する。

 

以上より、N以外に共通接線が存在すると仮定してどのような場合でも矛盾が生じたので、共通接線は存在しない。

 

また、C1側の接点がQより右にあり、C2側の接点がPより左にあるときも同様に矛盾する。

 

 

(iii)放物線が交わらないとき

どんな実数mに対しても、C1における傾きがmの接線は1本だけ定まるので、この接線のy切片をsとする。

同様に、C2における傾きがmの接線も1本だけ定まるので、この接線のy切片をtとする。

また、実数mに対し、関数f(m)をs-tで定めると、これは関数の値が一義的に定まる(well-definedである)。

このとき、f(x)=0を満たすxに対し、それに対応するC1とC2の接線は傾きがxで等しくy切片も等しいのでこれは共通接線を意味する。 

 

ここで、\( \displaystyle \lim_{m\rightarrow \infty}f(m)  \)を考えると、m>0の範囲でsは単調減少しtは単調増加するので\( s\rightarrow \infty, t\rightarrow- \infty \) となり\(\displaystyle \lim_{m\rightarrow \infty}f(m) = - \infty  \)

同様にして\(\displaystyle \lim_{m\rightarrow -\infty}f(m) = - \infty  \)

 

しかし2つの放物線の間を通る直線(図中の赤)を考え、この傾きをaとすると、s>tよりf(a)>0が成り立つ。よって、中間値の定理よりx<a,a<xの範囲に少なくとも1個ずつf(x)=0をみたすxが存在する。よって、共通接線は少なくとも2本存在する。・・・③

 

ここで、2つの放物線をC1:y=ax^2+bx+c, C2:y=dx^2+ex+f (a>0,d<0)とおき、f(α)=0だとすると、C1とC2は傾きがαの共通接線を持つ。

C1の接点のx座標をtとするとy'=2ax+bであるからα=2at+bよりt=(a-b)/2a

このとき接線の方程式はy-(at^2+bt+c)=α(x-t)

よってy=αx+(at^2+(α+b)t+c)

これがC2と接すればよいのでαx+(at^2+(α+b)t+c)=dx^2+ex+fが重解を持てばよい。

αx+(at^2+(α+b)t+c)=dx^2+ex+f ⇔ dx^2+(e-α)x+(f-(at^2+(α+b)t+c))=0よりこの判別式をDとすると

(e-α)^2-4d(f-(at^2+(α+b)t+c))=0

これはαに関する二次方程式なのでαの実数解は最大で2個、すなわち、f(α)=0の実数解は最大で2個であるから、2つの放物線の共通接線は最大でも2本である。・・・④

 

③④より、共通接線は2本存在する。