浅葱色の計算用紙

数学(広義)を扱っています。

夕日が背中を押してくる

問題:

夕日(周波数\( f \)の光)が静止している質量\(m\)の物体に水平から一度に投射される。光は全て反射するものとし、夕日のエネルギーは\(E\)Jであるとする。このとき、物体はどれだけの速度を得るか?高速度は\(c\)、プランク定数は\(h\)とする。

 

解答:

まず、1個の光子が物体にどれだけの運動エネルギーを与えるかを考える。

周波数\( f \)の光が持つエネルギーは\(hf\)、運動量は\(\frac{hf}{c}\)であるから、衝突後の光の周波数を\(f'\)、物体の速度を\(v\)とすると、衝突前と衝突後のエネルギー保存則と運動量保存則を考えて、

\( hf = hf' + \frac{1}{2}mv^2 \)

\( \frac{hf}{c} = -\frac{hf'}{c} + mv \) 

これらを整理すると、

\( hf - hf' = \frac{1}{2}mv^2 \)

\( hf + hf' = mv c \)

であるから、\( f'=\frac {mv(2c-v)}{4h} \)となる。

これを第2式に代入すると、

\( hf + \frac {mv(2c-v)}{4} =mv c \)であるから、

これを\(v\)について解くと、

\(v = \frac{\sqrt{(mc)^2+4mhf}-mc}{m} \)

なお、このとき

\( f' = \frac{mv c}{h}-f =\frac{c}{h}(\sqrt{(mc)^2+4mhf}-mc)-f \)

となる。

これは1個の電子が与えるエネルギーであり、\(E\)Jのエネルギーは電子\(\frac{E}{hf}\)個分に相当する。また、速度は運動エネルギーの平方根に比例するので、求める速度は

\( \frac{\sqrt{(mc)^2+4mhf}-mc}{m}\sqrt{\frac{E}{hf}} \)

となる。

 

 

注釈:

実際に夕日が人の背中を押した場合を考える。数値としては、\(E=70\mathrm{[J]}\) (夕日1秒分), \(m=42\mathrm{[kg]}\), \(f= 4.0 \times 10^{14} \mathrm{[Hz]} \) (赤い光)とする。すなわち、1秒間だけ押した場合を考える。このときの速度は

\( 6.837\times10^{-17} \mathrm{[m/s]} \)

となる。