全ての有理数が整数であることの証明
\( \newcommand \degree {^\circ} \)
問題:
全ての有理数が整数であることを証明せよ。
解答:
(論証上重要な主張を太字で示した)
有理数を任意に取り\( \frac{q}{p} \) (ただし\( q \)は整数、\( p \)は正の整数)とおくと、これが整数であることを示せばよい。
まず、連続する3つの数\( 57, 58, 59 \)に注目する。
任意の連続する3つの数には必ず\( 2 \)の倍数と\( 3 \)の倍数が含まれる。
\( 57 \)と\( 59 \)はともに\( 2 \)とも\( 3 \)とも異なる素数であるから、\( 57 \)も\( 59 \)も\( 2 \)の倍数でも\( 3 \)の倍数でもない。
したがって、\( 58 \)が\( 2 \)の倍数かつ\( 3 \)の倍数である。すなわち、\( 58 \)は\( 6 \)の倍数である。
ここで、\( 60 \)は\( 6 \)の倍数であるから、\( 60-58=2 \)は\( 6 \)の倍数同士の差なので\( 6 \)の倍数である。
したがって、ある整数\( k \)を用いて\( 2 = 6k \)と書くことができる。よって、\( 3k = 1 \)が成り立つ。
また、この\( k \)は明らかに正であり、かつ奇数と掛けて奇数になる整数なので奇数である。
すなわち、\( k \)は正の奇数である。
よって、\( p^k \)は\( p \)の倍数であるから、\( \frac{p^k}{p} = p^{k -1} \)は整数である。
ここで、\( k \)は奇数であるから、\( k -1 \)は偶数であり、よって\( p^{k -1} \)は平方数である。
したがって、\( \sqrt{p^{k -1}} \)は整数であるから、この値を\( u \)とする。
すると、
\( \begin{align*} &u^3p \\ &= p^{\frac{3}{2}(k -1)}p \\ &= p^{\frac{3k -3}{2}+1} \\ &= p^{\frac{3k -1}{2}} \\ &= p^{\frac{1-1}{2}} \\ &= p^0 \\ &= 1 \end{align*} \)
であるから、\( u^3 \)は\( p \)の逆数\( \frac{1}{p} \)であり、したがって\( u \)が整数であることから\( \frac{1}{p} = u^3 \)も整数であることが分かる。
最後に、整数と整数の積は明らかに整数であるから、
\( \frac{q}{p} = \frac{1}{p} \cdot q \)
は整数である。(Q.E.D.)
おまけ:
\( \tan{1 \degree} \)は有理数か。
解答:
上の議論から、整数は加減乗除で閉じている(体である)ことがわかる。
また、\( \frac{1}{2} \)は正整数であるから、任意の整数\( n \)に対し\( \sqrt{n} = n^{\frac{1}{2}} \)は整数の正整数乗なので整数である。よって、整数は平方根(のうち正のものを取る演算)に関して閉じている。
同様に、整数は立方根(のうち実数のものを取る演算)に関して閉じている。
ここで、
\( \sin{15 \degree} = \frac{\sqrt{6} - \sqrt{2}}{4}, \cos{15 \degree} = \frac{\sqrt{6} + \sqrt{2}}{4}, \sin{18 \degree} = \frac{-1 + \sqrt{5}}{4}, \cos{18 \degree} = \frac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4}\)
であり、これらは全て整数の四則演算と平方根によって構成されているから、整数である。
よって、
\( \sin{3 \degree} = \sin{18 \degree} \cos{15 \degree} - \cos{18 \degree} \sin{15 \degree} \)
\( \cos{3 \degree} = \cos{18 \degree} \cos{15 \degree} + \sin{18 \degree} \sin{15 \degree} \)
は整数の加減算および乗算によって構成されているから、整数である。
また、明らかに\( \cos{3 \degree} \neq 0\)であるから、
\( \tan{3 \degree} = \frac{\sin{3 \degree}}{\cos{3 \degree}} \)
は、整数と\( 0 \)でない整数の商なので整数である。
ここで、タンジェントの3倍角の公式を思い出すと、
\( \tan{3\theta} = \frac{3 \tan \theta - \tan^3 \theta}{1 - 3 \tan^2 \theta} \)
であったから、\( \theta = 1 \degree \)を代入し、\( \tan 1 \degree = x \)と置くと、
\( \tan{3 \degree} = \frac{3x - x^3}{1 - 3x^2} \)
すなわち
\( x^3 - 3\tan{3 \degree} x^2 - 3x + \tan{3 \degree} = 0 \)
が成り立つ。
これは\( x \)についての整数係数の3次方程式であるから、3次方程式の解の公式により、この方程式の解\( x_0 \)は整数の四則演算と平方根と立方根で書き表すことができる。
整数は四則演算と平方根と立方根で閉じているから、\( x_0 \)は(3つある可能性全てで)整数である。
よって、\( x = \tan{1 \degree} \)は整数であり、任意の整数は有理数であるから、\( \tan{1 \degree} \)が有理数であることが示された。