浅葱色の計算用紙

数学(広義)を扱っています。

JJJ(ジャバ・ジャバ・ジャバ)単位系

架空のキャラクターの「強さ」が、力、エネルギー、仕事率のどれで表されているかはキャラクターによって異なり、それらを直接比較するのは困難である。

空想科学読本」では、それらを比較するために次のような単位が導入されている:

 \( 120[\mathrm{kgf}] = 1[\text{ジャバ}] \)

 \( 3300[\mathrm{J}] = 1[\text{ジャバ}] \)

 \( 2.2[\mathrm{PS}] = 1[\text{ジャバ}] \)

右辺の「ジャバ」とは本来「ジャイアント馬場1人分」を表す単位であり、この単位を使うことで力、仕事率、エネルギーを「ジャイアント馬場○人分」という形で一度に比較することができる。

 

ところで、力のSI基本単位による表示は\( [\mathrm{kg\ m\ s^{-2}}] \)、エネルギーのSI基本単位による表示は\( [\mathrm{kg\ m^2\ s^{-2}}] \)、仕事率のSI基本単位による表示は\( [\mathrm{kg\ m^2\ s^{-3}}] \)である。

そこで、\( [\mathrm{kg}] \)、\( [\mathrm{m}] \)、\( [\mathrm{s}] \)からなるベクトル空間を考えると、3つのジャバはその基底となる。

すなわち、3つのジャバから\( [\mathrm{kg}] \)、\( [\mathrm{m}] \)、\( [\mathrm{s}] \)で表される他の全ての単位を構成することができる。

この記事では、このように構成された単位系をJJJ(ジャバ・ジャバ・ジャバ)単位系と呼ぶことにし、JJJ単位系とMKS単位系の換算を行うことにする。

 

また、JJJ単位系に存在する3つのジャバはどれも異なる次元を持つが、これらを区別しないことにする。

また、\( [\text{ジャバ}] \cdot [\text{ジャバ}] = \left[\text{ジャバ}^2\right] \)のように、ジャバに対しても普通の単位と同様の乗算が定義されているものとする。

3つのジャバを区別しないために、ある物理量が\( [\text{ジャバ}] \)にも\( \left[\text{ジャバ}^2\right] \)にも表されることがあると思うかもしれないが、そのようなことは実際には起こりえず、1つの物理量にはちょうど1つのジャバの指数が対応する。証明は読者の演習問題とする。

 

以下に実際の換算値を示す。値は有効数字までしか書かれていないが、内部的には無限桁の計算を行っている。

 

JJJ基本単位

ジャバの定義がMKS単位系で書かれていないので、MKS単位系に直す。

\( \begin{eqnarray*} 120[\mathrm{kgf}] &=& 120[\mathrm{kg}] \cdot 9.80665[\mathrm{m/s^2}] \\ &=& 1.18 \times 10^3 [\mathrm{N}] \end{eqnarray*} \)

エネルギー

\( 3300[\mathrm{J}] = 3.300 \times 10^3[\mathrm{J}] \)

仕事率

\( \begin{eqnarray*} 2.2[\mathrm{PS}] &=& ( 2.2 \cdot 735.49875) [\mathrm{W}] \\ &=& 1.6 \times 10^3 [\mathrm{W}] \end{eqnarray*} \)

有効数字は2桁である。

MKS基本単位

長さ

JJJ単位系において、長さは無次元量である。

\( 1\left[\text{ジャバ}^0\right] = \frac{1[\text{ジャバ}]}{1[\text{ジャバ}]} = \frac{3.300 \times 10^3[\mathrm{J}]}{1.18 \times 10^3 [\mathrm{N}]} = 2.80[\mathrm{m}] \)

例: JJJ単位系で表したジャイアント馬場の身長は\( 0.745 \)である。無次元量なので単位はない。

時間

JJJ単位系において、時間は無次元量である。

\( 1\left[\text{ジャバ}^0\right] = \frac{1[\text{ジャバ}]}{1[\text{ジャバ}]} = \frac{3.300 \times 10^3[\mathrm{J}]}{1.6 \times 10^3 [\mathrm{W}]} = 2.0[\mathrm{s}] \)

例: JJJ単位系で表したジャイアント馬場の存命時間は\( 9.4 \times 10^8 \)である。無次元量なので単位はない。

質量

少しわかりにくいが、JJJ単位系において、質量は\( [\text{ジャバ}] \)の次元を持つ。

\( 1 [\text{ジャバ}]  = \frac{\left(1[\text{ジャバ}]\right)^2 \cdot 1[\text{ジャバ}]}{\left( 1[\text{ジャバ}] \right)^2} = \frac{\left(1.18 \times 10^3[\mathrm{N}]\right)^2 \cdot 3.300[\mathrm{J}]}{\left( 1.6 \times 10^3 [\text{W}] \right)^2} = 1.7 \times 10^3 [\mathrm{kg}] \)

例: JJJ単位系で表したジャイアント馬場の質量は\( 7.7 \times 10^{-2} [\text{ジャバ}] \)、すなわち77ミリジャバである。

その他の単位

以下に一覧を示す。

 

面積: \( \left(1\left[\text{ジャバ}^0\right]\right)^2 = \left(2.80[\mathrm{m}]\right)^2 = 7.86 [\mathrm{m^2}] \)

        例: \(1[\text{東京ドーム}]\)は\(5.95 \times 10^3 \)である。

体積: \( \left(1\left[\text{ジャバ}^0\right]\right)^3 = \left(2.80[\mathrm{m}]\right)^3 = 2.21 \times 10^1 [\mathrm{m^3}] \)

        例: \(1[\text{東京ドーム}]\)は\(5.62 \times 10^4 \)である。

速度: \( 1\left[\text{ジャバ}^0\right] = \frac{1[\text{ジャバ}^0]}{1[\text{ジャバ}^0]} = \frac{2.80 [\mathrm{m}]}{2.0 [\mathrm{s}]} = 1.4[\mathrm{m/s}] \)

        例: 光の速さは\(2.2 \times 10^8 \)である。

加速度: \( 1\left[\text{ジャバ}^0\right] = \frac{1[\text{ジャバ}^0]}{\left(1[\text{ジャバ}^0]\right)^2} = \frac{2.80 [\mathrm{m}]}{\left( 2.0 [\mathrm{s}] \right)^2} = 0.67[\mathrm{m/s^2}] \)

        例: 標準重力加速度は\(1.5 \times 10^1 \)である。

躍度: \( 1\left[\text{ジャバ}^0\right] = \frac{1[\text{ジャバ}^0]}{\left(1[\text{ジャバ}^0]\right)^3} = \frac{2.80 [\mathrm{m}]}{\left( 2.0 [\mathrm{s}] \right)^3} = 0.33[\mathrm{m/s^3}] \)

周波数: \( 1\left[\text{ジャバ}^0\right] = \frac{1}{1[\text{ジャバ}^0]} = \frac{1}{2.0 [\mathrm{s}]} = 0.49[\mathrm{Hz}] \)

        例: テノールは\(9.0 \times 10^2 \)の音を出す。

密度: \( 1\left[\text{ジャバ}^1\right] = \frac{1[\text{ジャバ}^1]}{\left(1[\text{ジャバ}^0]\right)^3} = \frac{1.7 \times 10^3 [\mathrm{kg}]}{\left( 2.80 [\mathrm{m}] \right)^3} = 79[\mathrm{kg/m^3}] \)

        例: 金の密度は\(2.4 \times 10^2 [\text{ジャバ}]\)である。

圧力: \( 1\left[\text{ジャバ}^1\right] = \frac{1[\text{ジャバ}^1]}{\left(1[\text{ジャバ}^0]\right)^2} = \frac{1.18 \times 10^3 [\mathrm{N}]}{\left( 2.80 [\mathrm{m}] \right)^2} = 150[\mathrm{P}\mathrm{a}] \)

        例: 大気圧は\(6.77 \times 10^2 [\text{ジャバ}]\)である。