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JMO予選をグレブナー基底で解く

この記事では、2018年JMO予選6番をグレブナー基底で解こうと思います。

 

参考文献:

 

問題:

三角形ABCは直角二等辺三角形で、∠A=90°である。その内部に3点X,Y,Zをとったところ、三角形XYZは∠X=90°であるような直角二等辺三角形であり、さらに3点A,Y,Xおよび3点B,Z,Yおよび3点C,X,Zはそれぞれこの順に同一直線状に並んでいた。AB=1,XY=1/4のとき、線分AXの長さを求めよ。ただし、STで線分STの長さを表すものとする。

 

図:

f:id:itonayuta60:20180113095328p:plain

 

解答:

幾何の問題をグレブナー基底で解くためには座標が必要なので、座標設定を行う。ここでは上図の座標をそのまま用いる。このとき、\( A(0,0), B(1,0), C(0,1) \)となる。ここから、求める量を未知数として含む連立方程式を立てる。

以下、\(X\)の座標を\( (x,y) \),\(Y\)の座標を\( (s,t) \),\(Z\)の座標を\( (u,v) \),求める長さ(\(AX\))を\(l\)とする。

このとき、∠AXC=90°であるから、

\(\overrightarrow{AX}\cdot\overrightarrow{XC}=0 \)すなわち\( -x^2+y(1-y)=0 \ \cdots(1) \)となる。

 また、\(Y\)は線分\(AX\)上の点であるから、\(Y\)の座標は定数\(m (0<m<1) \)を用いて

\( s=mx, t=my \)

と表される。これをグレブナー基底として扱いやすくするために移項して右辺を0にすると、

\( s- mx=0 \ \cdots(2) \)

\( t-my=0 \ \cdots(3) \)

となる。

 また、\(Z\)は線分\(BY\)上の点であるから、\(Z\)の座標は定数\(n (0<n<1) \)を用いて

\( 1-u=n(1-s), v=nt \)

と表される。これをグレブナー基底として扱いやすくするために移項して右辺を0にすると、

\( 1-u-n(1-s)=0  \ \cdots(4) \)

\( v-nt=0 \ \cdots(5) \)

となる。

 また、\(X\)は線分\(CZ\)上の点であるから、\(X\)の座標は定数\(k (0<n<1) \)を用いて

\( x=ku, 1-y=k(1-v) \)

と表される。これをグレブナー基底として扱いやすくするために移項して右辺を0にすると、

\( x-ku=0  \ \cdots(6) \)

\( 1-y-k(1-v)=0 \ \cdots(7) \)

となる。

ここで、\(XY=\frac{1}{4}\)であるから、\({XY}^2=\frac{1}{16}\)なので、

\( (x-s)^2+(y-t)^2=\frac{1}{16} \)

すなわち \( 16(x-s)^2+16(y-t)^2-1=0 \ \cdots(8) \) となる。

また、三角形XYZは∠X=90°の直角二等辺三角形なので、\(XZ=XY=\frac{1}{4}\)である。

よって\( (x-u)^2+(y-v)^2=\frac{1}{16} \)

すなわち \( 16(x-u)^2+16(y-v)^2-1=0 \ \cdots(9) \) となる。

そして、求める値\(l\)は、\(l=AX\)と定義したから、\(l^2={AX}^2\)である。

よって \( x^2+y^2-l^2=0 \ \cdots(10) \)となる。

 

注意:ここまでに、10個の未知数(\(x,y,s,t,u,v,m,n,k,l\))と10本の式( \( (1)\sim(10) \) )があるので、理論上これは解けるはずである。

 

\( (1) \sim (10) \)の左辺のグレブナー基底\(x,y,s,t,u,v,m,n,k,l\)の順の優先度の辞書的順序で計算すると(辞書的順序でないとうまくいかない)、

[-102400*l^8+240896*l^6-181936*l^4+46815*l^2-3375,-1575*k-25600*l^6+40224*l^4-18434*l^2+3810,6400*l^6+(960*n-14816)*l^4+(-1860*n+10681)*l^2+900*n-2265,-6400*l^6+15056*l^4+(3375*n^2-6750*n-7996)*l^2-3375*n^2+6750*n-660,24524800*l^6-54094592*l^4+(1350000*n+34429672)*l^2+10378125*n^3-31093875*n^2+29095875*n-14590005,-454400*l^6+978976*l^4+(25200*m+25200*n-667391)*l^2-25200*m-25200*n+142815,-65689600*l^6+168214784*l^4+(-756000*n-140983144)*l^2+(-23436000*n+23436000)*m-24215625*n^2+72576000*n-9146415,102400*l^6-240896*l^4+181936*l^2+54000*m^2-108000*m+7185,4687200*v-79078400*l^6+167671936*l^4+(151200*n-106507076)*l^2-4687200*m+4843125*n^2-14515200*n+27434415,315*u+41600*l^6-89864*l^4+(-4410*n+61359)*l^2+4725*n-13410,25200*t-454400*l^6+978976*l^4+(25200*n-667391)*l^2-25200*m-25200*n+142815,5040*s+697600*l^6-1499104*l^4+(-75600*n+1020429)*l^2+75600*n-218925,-y+l^2,-315*x-41600*l^6+89864*l^4+(4725*n-61674)*l^2-4725*n+13410]

となる。ここで、最初の式に注目すると、

-102400*l^8+240896*l^6-181936*l^4+46815*l^2-3375

と、\(l\)のみに関する複2次式になっていることがわかる。

この式が\(0\)となる正の実数\(l\)の値を頑張って探すと、(\(l=1\)が根であることと有理根定理から有限時間の手計算で求まる)

\( l=1, \frac{\sqrt{15}}{4}, \frac{\sqrt{79}-2}{20}, \frac{\sqrt{79}+2}{20} \)

となる。

このうち、明らかに\(l=1\)は除外でき、また∠CXA=90°よりXはCAを直径とする半円上にありかつ三角形ABCの内側なので\( l<\frac{\sqrt{2}}{2} \)よって\( l=\frac{\sqrt{15}}{4} \)も除外できる。

またグレブナー基底の第2式に注目すると

1575*k=25600*l^6+40224*l^4-18434*l^2+3810

であるが、\( l=\frac{\sqrt{79}-2}{20}<\frac{4\sqrt{5}-2}{20}<0.4 \)のとき\(k>1\)となり不適

以上より残った\( l=\frac{\sqrt{79}+2}{20} \)が正解となる。この解に対する\( m,n,k \)が1未満であることも有限時間で確認できる。