浅葱色の計算用紙

数学(広義)を扱っています。

いろんなグラフの考察

私がニコニコ動画を見ていると、こんな動画を見つけた:

www.nicovideo.jp

しかし私はこれらのグラフを見て、「本当にこのグラフで正しいのだろうか?」と思った。

グラフ描画ソフトとしてはGRAPESが使われている。コンピューターが書いた以上、浮動小数点等の計算誤差は免れない。

そこで、私がこれらのグラフの概形を検証してみることにした。

(また、Desmosで同じ式を入力し動画に示されたグラフおよび計算結果を確認した)

(一部の検証のみ行うことにした)

 

Level1

 \( \frac{1}{x}+\frac{1}{y}=\frac{1}{x+y} \)

このグラフは、動画ではx軸方向に1/80ごとのギザギザが入ったy=-xのグラフに見えるが、コメントで指摘されている通り、この方程式を満たす実数x,yは存在せず、グラフは空白でなければならない。以下でそれを証明する。

\( \frac{1}{x}+\frac{1}{y}=\frac{1}{x+y} \) の分母を払って

\( (x+y)^2=xy \)

\( x^2+xy+y^2=0 \)

\( (x+\frac{y}{2})^2+\frac{3}{4}y^2 =0 \)

この時、左辺は常に0以上であり、この等号が成り立つのは\( x+\frac{y}{2}=y^2=0 \) すなわちx=y=0のときに限られるが、x=y=0は元の式の分母を0にするので不適

よって元の式を満たす実数x,yは存在しない (Q.E.D.)

 

 \( xy=\sqrt[3]{xy} \)

動画の注釈の通り、この式は \( xy^{-\frac{3}{2}}=1 \) と同値であり、これは\(xy=\pm1\)と同値であるから、動画にある通り2組の双曲線が描かれる。

 

Level2

\( x^2+y^2=sin(xy) \)

動画では|x|≦3.2×10^-9の範囲にのみグラフが書かれているが、実際にこれを満たす(x,y)は(0,0)のみであることを以下で証明する。

\( f(x,y)=x^2+y^2-sin(xy) \) とすると、f(x,y)≦0になることがあるのはx^2+y^2≦1の範囲内のみなので、以下-1≦x≦1,-1≦y≦1で考えることにする。

\( \frac{\partial}{\partial x}f(x,y)=2x-ycos(xy) , \frac{\partial}{\partial y}f(x,y)=2y-xcos(xy) \)であるから、

\( cos(xy)=C \)とおくと

f(x,y)が極値を取るのは \( 2x-yC=0, 2y-xC=0 \)のとき

このとき \( x(4-C^2)=0 \)となるが -1≦C≦1より x=0 よって y=0

以上より f(x,y)が極値を持つのは(x,y)=(0,0)のとき

ヘッセ行列を考えるとこれは極小値であるからこれは最小値でもある

よってf(x,y)の最小値は0(x=0,y=0のとき)なので元の式のグラフは原点のみになる。(Q.E.D.)